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介護食にとろみ剤を入れる理由は?うまく混ぜるコツや注意点まで徹底解説

食べ物や飲み物が飲み込みにくくなると「とろみ剤」を使います。

とろみ剤は上手に使えば飲み込みの力が低下した方に有効ですが、うまく混ぜないとダマになりやすく効果が半減するのがデメリットです。

どうしたらダマにならないのかしら・・

混ぜ方のコツをお教えしますよ

この記事ではとろみ剤の特徴やとろみ剤を使うメリット、基本的な使い方、ダマにならないコツなどについてお伝えします。

とろみ剤を使う際の参考にしてください。

目次

とろみ剤とは?

とろみ剤とは「とろみ調整食品」ともいい、お茶やみそ汁などの液体に添加してとろみをつける粉末です。液体にとろみ剤を加えるだけでサラサラだった液体がまとまり、とろみがついた状態になります。

液体にとろみ剤をどの程度入れるのかによって、とろみの濃度の調節も可能です。

飲み物のほかにも、介護食のあんかけに使用したりお粥に混ぜたりと、さまざまな利用方法があります。冷たいものにもすぐにとろみがつけられますよ。


介護食にとろみをつける理由

介護食にとろみをつける理由は、誤嚥(ごえん)やむせを防ぐためです。

誤嚥(ごえん)とは、食べ物や飲み物が食道ではなく誤って気管に入り込むことです。

脳の病気や加齢によって飲み込みの力は低下します。飲み込みの力が弱まると一度に飲み込める量が少なくなり、飲み込むスピードがゆっくりになります。

飲み込みが難しくなった方にとって特に難しいのは、液体のようなサラサラで動きが速いものです。口に入れてからすぐにのどに流れ落ちるために、飲み込むのが間に合わず誤嚥してしまいます。そのような場合に有効なのが「とろみ剤」です。

とろみ剤には以下の働きがあります。

とろみ剤の働き

  • 飲み物がゆっくりのどに流れるようにする
  • 飲み物をまとまりやすくする

とろみ剤の働きは、飲み物の動きをゆっくりにして、のどでまとまりやすくすることです。そのため飲み込みの力が弱った方が使用することにより、飲み込む際のむせや誤嚥のリスクを下げられます


とろみ剤の濃度は3種類に分けられる

とろみ剤を入れた液体は、とろみの濃度によって以下の3つに分けられます。

薄いとろみ

薄いとろみは、スプーンを傾けるとすっと流れ落ちる状態です。

飲み物の種類や温度によってはとろみがついているのかわかりにくいくらいで、ストローで簡単に吸い込めます。

フォークですくうと間を素早く流れます。

中間のとろみ

中間のとろみは、スプーンを傾けると、とろとろと流れる状態です。

フォークですくうと間をゆっくり流れます。

とろみがついているのはわかりますが「drink(飲む)」の感覚に近いです。多少の抵抗があってもストローで飲めます。

濃いとろみ

濃いとろみはスプーンを傾けても形状が保たれて、流れにくい状態です。

フォークですくっても間から流れ出ません。

「drink(飲む)」というよりは「eat(食べる)」の感覚に近い状態で、ストローで吸うのは難しいです。

とろみ剤の濃度はどうやって選んだらいいの?

とろみ剤の必要性やとろみ剤の濃度が3種類あることがわかっても、実際使うときの濃度はどうしたらよいのか迷うのではないでしょうか。

ここからはとろみ剤の濃度について説明します。

必要なとろみの量は飲み込みの力によって異なる

適したとろみの濃度は、人によって異なります。

一般的に、飲み込みの力の低下が重度であればあるほど、多くのとろみが必要になります(くわしくは後述しますが入れすぎも危険です)。せっかくとろみ剤を入れても、適した濃度でないと誤嚥のリスクが十分に下げられません。

また食べるスピードやとろみの好き嫌い(とろみが嫌いで水を飲まなくなってしまうなど)も考慮する必要があります。

このようにとろみの濃度はさまざまな側面から検討が必要なので、主治医や栄養士、言語聴覚士などに相談するのがおすすめです。

とろみの量は正確に

とろみ剤は製品ごとに必要な量が決まっています

液体の量に対してどのくらいの量を入れたらよいのかは箱や袋に記載があるので、とろみ剤ごとに必ず確認するようにしましょう。

少しの量の違いでとろみの性状が変わってしまうため、正確に計るのが大切です。

飲み物にとろみ剤を入れるときには、同じ容器・同じ計量スプーンを使用すると誤差が少なく、手間も省けておすすめですよ。

とろみ剤の使い方

とろみ剤の入れ方

  • 飲み物にあとからとろみ剤を入れる
  • 乾いたコップにとろみ剤を入れておいて、飲み物を加える

とろみ剤の入れ方は2種類あります。飲み物のあとから入れるか、先にコップに入れておくかです。

結論から言うと、どちらでも大丈夫です。

どちらの方法を選ぶかよりは、そのあとにきちんと混ぜる方が大切です。

尚、飲み物によっては以下のようにとろみがつきにくい飲み物があります。

とろみがつきにくいもの

  • 牛乳
  • ジュースなどの酸性の飲み物
  • 塩分の高い食品

乳製品や酸性などのとろみがつきにくい食品の場合には、とろみの量を少しだけ増やして(箱に記載がある通り)、とろみを入れたあと10分程度おいてから再度かきまぜてみましょう

最初はとろみがつかなくても、10分程度たつととろみがついてきます。

とろみ剤を入れた直後にとろみが足りないと思って次々に追加すると、あとから固まりすぎてしまいます。

ろみがつきにくい・時間がかかる食品は、混ぜて10分ほどおいてから再度よく混ぜて状態を確認するのが大切です。


とろみ剤をだまにならずに混ぜるコツ3選!

とろみ剤を利用している方からよく聞く悩みとして多いのは「だまになってしまう」「とろみがつかない」などです。

とろみ剤を適切な量入れていても、ダマができるととろみの濃度が下がるために効果が半減します。

ここからはできるだけダマにならずに、均一にとろみをつけるコツをお伝えします。

とろみ剤はかき混ぜながら少しずつ加える

とろみ剤は、液体をかき混ぜながら少しずつ加えましょう。

少しずつと言っても、とろみ剤を何回かに分けて加えるとダマになるのでいけません。

かき混ぜながら、少しずつ、連続して加えるのが肝心です。


すばやく全体に混ぜる

とろみ剤を混ぜるコツは、すばやく全体に拡散させることです。ゆっくり混ぜていると全体に広がる前に水分を吸ってダマになるので、できるだけすばやく混ぜましょう。

混ぜる際は、円状に混ぜながら、前後の動きも取り入れると、均一に混ざりやすいですよ。ぐるぐると円状に混ぜるだけだととろみ剤が真ん中に集まり混ぜ残しが出るのです。

100円ショップなどで売っているミニ泡だて器を使用するのもおすすめです。

30秒以上混ぜ続ける

全体に混ざったと思っても、30秒くらいは混ぜ続けるのが大切です。一見混ざったように見えても、とろみ剤がコップの底に固まっていた…なんてこともよくあります。

30秒ほど混ぜると、とろみ剤も安定していきます。

難しければ液体とろみ剤も選べる

手の動きに不安がある方や、ダマにならずに混ぜる自信がない方は、粉末状ではなく液体状のとろみ剤も選択できます。

多少料金は高くなりますがダマにならずにとろみがつけやすいのが特徴です。

ゆっくり自分のペースで混ぜられるので、心配な方は一度試してみるとよいでしょう。


とろみ剤を使うときの注意点

誤嚥を防ぐのに効果的なとろみ剤ですが、使用する際には注意点があります。

注意点を守らないとかえって危険になる場合があるのでよく確認しておきましょう。

とろみ剤の追加はだめ

とろみつけた飲み物に、とろみ剤を追加して入れてはいけません

なぜならとろみがついた液体に粉末のとろみ剤を追加すると、うまく混ざらずにダマになるからです。

飲み物にとろみを入れたあとになんだかとろみが足りなかった・・ということはよくあります。

その際に、あとから粉末を足してダマができると、とろみの濃度が濃くならないばかりか、ダマを誤嚥するリスクが出てきます。

あとからとろみの濃度を濃くしたくなった場合は、濃いとろみ液を作って、追加しましょう

濃い液体を追加するのであれば、液体同士なのでよく混ざります。

とろみ剤の入れすぎは危険

とろみ剤は誤嚥を防ぐのに効果的ですが、入れすぎはかえって危険です。

とろみ剤は、一定量以上入れ過ぎると、べたつきが強くなり喉にはりつきやすくなります。

飲み込もうとしても喉や口の中に残ってしまい、誤嚥するリスクが高まります。

とろみの量は箱に記載がある量までを目安に、必要な量を守りましょう。


とろみ剤は片栗粉で代用できる?

介護食のおかずなどでは、とろみ剤の代わりに片栗粉を使用する場合があります。

とろみ剤はそれなりに値段が高いので、いっそのこと全部安い片栗粉で代用できないのかと思う方もいるのではないでしょうか。

結論から言うと、すべてを片栗粉で代用するのは難しいです。

片栗粉ととろみ剤では、大きな性質の違いがあるからです。1つずつ説明します。

片栗粉は唾液でサラサラにもどる

片栗粉ととろみ剤の性質の違いは2つあります。

片栗粉

  • 加熱が必要
  • 唾液でとろみがサラサラにもどってしまう

片栗粉は、一時的にとろみをつけるのに便利です。料理にも使われるので馴染みがある方が多いでしょう。

飲み物にも片栗粉でとろみをつけられますが、必ず加熱が必要です。冷たい飲み物が飲みたいときには、加熱したあとに冷まさなければいけません。

また、片栗粉はでんぷん質の粉です。でんぷんは唾液に含まれる酵素(アミラーゼ)と混ざると分解されて、サラサラになる性質があります。

最初はとろっとした中華丼を食べていたのに最後はびしゃびしゃになってしまった経験がないでしょうか。それと同じ原理です。

メインのおかずなどに片栗粉のとろみを使用する場合は、食べている最中に唾液と混ざらないように、少量ずつ、取り分けて食べ進めるなどがおすすめです。

とろみ剤は唾液と混ざっても安定している

とろみ剤

  • 加熱が不要
  • 入れたら唾液と混ざってもサラサラにならない

片栗粉と違ってとろみ剤は加熱しなくても使えて、唾液と混ざってもサラサラに戻ることはありません。

料金が高くなるのはネックですが料理のあんかけにも利用できるので便利です。

少量のすぐ食べ終わるものであれば片栗粉のとろみでよいですが、直接口をつけて飲む飲み物などは、とろみ剤が向いているでしょう。


とろみ剤の選び方

とろみ剤を選ぶ際には以下の点に注目して選びましょう。

とろみ剤の選び方

  • ダマになりにくく溶けやすいもの
  • べたつきにくいもの
  • 素材の味や色、においを変えにくいもの
  • 飲み物の種類や温度などの影響がすくないもの
デンプン系(第1世代)グアガム系(第2世代)キサンタンガム系(第3世代)
特徴・とろみをつけるのに必要な量が多い
唾液と混ざるとサラサラにもどりやすい
・少量でとろみがつく
使用量が多いとべたつく
・白く不透明になりやすい
・味、においがある
味、においが少ない
色が透明でクリア

ねばつきが少ない
製品例トロメリン顆粒
エンガード
トロミアップエース
ハイトロミール
スルーソフトリキッド
つるりんこ
とろみエール
ソフティア
トロミーナ など

第2、第3と後ろの世代に進むほど改良が加えられていて、利用しやすくなっています。現在売られているものの主流は第3世代のキサンタンガム系です。

それぞれに長所や短所があり、同じ世代の製品の中でも特徴が異なります。

自分が使う製品の特徴を知って、上手に利用しましょう。

(参照:「とろみ」の適切な指導に向けて- 1.とろみの調節やとろみ調整食品に関する 医療従事者の現状


とろみ剤のデメリットは?

便利なとろみ調整食品には、デメリットもいくつかあります。

とろみ調整食品のデメリット

  • 入れ過ぎるとべたついて誤嚥しやすくなる
  • 味が変わりおいしく感じにくい
  • とろみ剤によっては、速崩壊性錠剤(口の中で唾液や少量の水で崩れる飲み込みやすい錠剤)の崩壊に影響

とろみ剤は入れればよいわけでなく、入れ過ぎるとのどにはりついて、誤嚥のリスクが高まります。

その方に適した量を入れるのが大切です。

そしてとろみ剤を入れた飲み物や食べ物をおいしく感じられず、食事量や飲水量が減る方がいます

飲水量が減ると、便秘や脱水のリスクにつながります。

できるだけおいしく食べるためにも、とろみ調整食品の量は、適量を守りましょう。

また薬に関する研究では、速崩壊性錠剤(口の中で唾液や少量の水で崩れる飲み込みやすい錠剤をとろみ剤入りの飲み物で飲むと、溶けるまでの時間が延びるとわかりました。

とろみ剤入りの飲み物に浸した錠剤は、薬が溶けるまでの時間が最大で6倍強延長し、効果への影響も懸念されます。服薬ゼリーの場合は、とろみ剤に比べると影響が少なかったようです。

薬を飲むときには、とろみ剤を使用していることを薬剤師や医師に伝え、とろみ剤の影響がある薬かどうか確認しましょう。場合によってはとろみ剤の影響を受けにくい薬を処方してもらうか、服薬ゼリーを使うほうがよいでしょう

(参考:とろみ調整食品が速崩壊性錠剤の崩壊,溶出,薬効に及ぼす影響

とろみ剤はどんな味?

とろみ剤の味は、キサンタンガム系のものであれば無味無臭です。

色も透明で、ただとろっとするだけといった印象が強いです。ただし、飲み物の種類や温度などによってとろみの感じ方は異なります。いろいろな飲み物や温度で試してみるのがおすすめです。

実際にいろいろな飲み物に入れて飲みましたが、味は気にならずのど越しの違和感だけでした。

初めて試しておいしかったのは炭酸飲料のとろみです。ほかにもビールやワインなどに入れて飲む方もいるようです。

飲み込みの力が低下しても、好きな飲み物をあきらめずに飲めるのは嬉しいですね。

(参考:フードケア公式HP:omgファミリーのブログ「炭酸ジュースにとろみをつける方法」)

まとめ

とろみ剤は、飲み込みの力が低下した方にとって、誤嚥やむせを予防してくれる便利なものです。しかし、使用量や混ぜ方によってはデメリットもあります。ダマにならないコツや使用量を守って、効果的に利用するのが大切です。とろみ剤の味が好きでない方も、飲み物や温度によって味が変わります。楽しみながら試されてはいかがでしょうか。

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